旧絵鞆小学校円形校舎の保存活用のための出資金のお願い

一般社団法人 むろらん100年建造物保存活用会 代表理事 村田正望

   

 私たち、一般社団法人むろらん100年建造物保存活用会は、5年前(2014年)に、旧三菱合資会社室蘭出張所の取壊しの危機に際して、室蘭の歴史と文化を保存活用するために設立された社団法人です。旧三菱合資会社室蘭出張所(今年建立104年)は、夕張等からSLで運ばれた石炭を積出すための仕分けをしていた事務所で、三菱から市に譲渡の申し入れをしましたが、市はこれを断ったため、私たちが買い取り取壊しの危機を回避し、この5月に日本遺産「炭鉄港」構成文化財に認定されました。

 

地域愛と「観光」による経済効果のために

 現在、この建物は、新しい地域発見型観光として国土交通省企画のインフラツアーをはじめとする観光ツアーのルートにもなり、室蘭と北海道の歴史をつなぐ存在として認知されはじめていますが、このように、歴史的建造物を残し活用することによって、外への周知と、地域の人たちのまちへの愛着を高める効果が得られることは、政府が進める地方創生の根幹でもあり、観光によって外貨を稼ぐことは、急激な少子高齢化に際して、「観光」と「地域愛」につながる持続可能なまちづくりへ向けてとても重要だと考えます。

 観光効果面では、たとえば、現在の室蘭の人口減少速度は、1000/年ですが、定住人口一人あたりの平均消費額は、およそ125万円/年ですから、毎年室蘭から失われている市場規模は、125000万円です。一方で2018年に室蘭に来た観光客の入込客数は約124万人ですから、一人1000円、市内でお金を使うとすると、124000万円と、観光だけで補填できることになります。観光入込客数を増加させることが、地域の持続性と直結することがわかります。

 また、地域愛では、たとえば、観光ガイドを養成することで、これまでまちに埋もれていた価値を再発見し、まちの資産価値を伝えることで、地域住民がまちを大切にし、まちに対する誇りを高め、より良い地域を作ることにつなげることができます。

まちのランドマーク・旧絵鞆小の円形校舎2棟が取壊し寸前!

  さて、2棟ツインタワー旧絵鞆小学校がいま取壊しの危機にあります。全国でも珍しい2棟の円形校舎は、非常にアーティスティックな設計で、教室棟と体育館棟(及び理科芸術棟)が、眼鏡のようにつながった形をしています。敷地には世界遺産になろうとしている縄文遺跡。白鳥大橋を目の前にし、近くに北海道最古の水族館、道の駅「みたら」などがあり、観光地としてはランドマーク的な存在といえます。

1棟だけなら珍しくない。でも2棟セットで強いオリジナリティが出てきます。

 数年後には、客船バースができ、旧絵鞆小をしっかり活用することで観光を活性化できれば、放置されている土地も資産活用の目処が立つのではないかと考えます。

これまでの経緯

 これまでの経緯を簡単にご説明します。室蘭市(教育委員会)は4年前に閉校する前までは、旧絵鞆小を歴史的建造物として、取り壊さず、保存するとの方針でした。しかし、閉校後、耐震(体育館棟3Fのみ)を理由に、閉鎖され体育館棟の取壊しの方向に変わります。市民による署名、要望書などが提出され、NHKをはじめとするテレビ局、新聞社にも多く報道されてきました。市が設置する文化財審議会による何年もの審議では、全会一致で「保存」への答申を得ていますが、結局、市は、2019年9月取壊し整備予算として1.4億円を計上。それと同時に、何年もにわたって保存を訴えてきた文化財審議会会長は辞任しました。(これまでの経緯の詳細は、http://muroran100.com/etomo/  をご覧ください。

 それにしても、市が提示した耐震補修の見積り額が高すぎるということで、私たちが調査したところ、3300万円で体育館の屋根と壁面の補修が可能であり、いま取り壊さなくても良いことがわかりました。もし、買い取ることができれば、市の税金を1億円以上使わなくてよくなりますから、市にとっても悪い話ではありません。

            
教室棟 螺旋階段

              
体育館棟 体育館

 

資金受け入れと建物の運営・活用策

 そこで、旧絵鞆小を買い取り、保存活用するために、一般社団法人 むろらん100年建造物保存活用会が個人・法人の出資者の受け入れとなり、その資金をむろらん100年で理事である三木真由美が旧絵鞆小の保存活用のために起業する株式会社チェルキオ(イタリア語で円形の意味:基本的に建物の運営・管理)に出資する形にしたいと考えています。

 活用策ですが、ロケ―ションと建屋の性質などを考え、祝津地域のランドマーク「文化・歴史・教育のプラットフォーム」を目指します。

 たとえば、図右側の教室棟は、耐震有効な建物として、縄文展示、事務所、アトリエ、カフェなどに活用するほか、屋上は360度の観光用展望台に。左側の体育館棟は、1Fは室蘭の歴史・文化展示スペース(貸し展示場)にし、2Fは北海道最古の科学館・室蘭市青少年科学館が開館以来続け若者に科学の楽しさを伝えてきた「科学クラブ」運営のバックヤードに活用。追々、市内の工業系企業のエンジニア、工業大学などと連携し、AI人材を育成するプラットフォーム機能を創るなら、アート系と合わせて本物感を持って過去から未来につながる拠点にできると考えます。3Fは、耐震後、多目的ホールと同時に、地域住民の避難所にすることができます。

 これは、私たちの理想であり目標ですが、ヨーロッパの各地域がランドマークとなる建物を大切にし、観光を展開するようにできることが大切です。(もし、より良い活用と買い取りを希望する法人・個人の方がいましたら、ぜひともお願いしたい次第です。)

 この写真のように、旧絵鞆小の2棟があることで、夜景はもちろん、地中にある縄文遺跡(日本政府が世界遺産に推進中)もあり、アイヌが住んでいた地として共生空間とつながる文脈もあります。内湾には炭鉄港の日本遺産。外湾には白老共生空間いつながる景勝ピリカノカと、ブラタモリ室蘭で初日内湾、翌日外湾が紹介されたように、12日の観光をすることができます。これは、国・道が推進している観光政策に繋がります。

クラウドファウンディングなどによる出資のお願い

 旧絵鞆小は現在、クラウドファウンディングを行っています。(https://bit.ly/2qwaM8c) 開始は、20191018日、終了は1030日と短期ですが、これまでの経緯から、どうしてもここまで追い詰められた状態です。市は、10月末までであれば、もし条件が合えば、買い取りを認める可能性があるとしていますが、非常に厳しい状況。目標は3300万円です。出資方法は、手数料の取られるクラウドである必要はなく、出資の覚書きでも結構です。

 

最後に。安田顕さんの母校

 昨年、私は俳優の安田顕さんと絵鞆小学校でNHK「北海道ひざくりげ・北海道150年スペシャル」番組に出演しました。彼は私の5つ下の卒業生なのですが、はじめてお会いし、2時間余りの短い撮影時間の中、ずいぶん懐かしく共感的な話をしました。彼はこれから取り壊されようとしている円形校舎体育館棟で、涙ながらに観光とか保存できるものなら何とかしてほしいと語っていました。

 
私は歴史的建造物の保存活用に関わっていることで、全国のさまざまな方とお会いすることがありますが、市内、道内の方はもちろん、本州では霞が関の官僚まで、会う人会う人、写真を見るや、これは貴重な建物、ぜひ残して欲しいと言います。

 正直なところ、この建物に関する真の問題は、この地域全体にビジョンが無いことだと思います。ビジョンが無いが故に、古い、金にならないと、歴史・文化が失われて行くのですが、しかし、ヨーロッパでは生き残り策として、行政と民間が一体となってまちの魅力を作り、貿易黒字と同等の観光による外貨を取得しています。開拓以降、150年で培った歴史すら残せず、これからどうするのか。1本の木を切ることから環境問題を考えるのと同じく、1つの建屋から未来を描くことが大切だと考えます。観光は知が集積する産業です。北海道、日本の明るい未来のために、ぜひとも、出資のご協力をお願いしたいと考えております。どうぞ宜しくお願い致します。
(これまでの経緯は絵鞆小保存活用ラボの公式サイトへ)

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これまでの経緯は絵鞆小保存活用ラボの公式サイト