朝日新聞の(わがまち遺産)に、旧絵鞆小の円形校舎(室蘭)の記事が掲載されました。
ぜひ、ご一読ください。
工都見守り60年、揺れる存廃 旧絵鞆小の円形校舎
室蘭のシンボル・白鳥大橋のそばに、直径約30メートルの円柱状の建物が二つ並んでいる。1892(明治25)年に開校した旧絵鞆(えとも)小学校の校舎だ。
高度経済成長期に児童数が増え、木造校舎が老朽化したことから、1958年に東棟、60年に西棟が建てられた。外周はすべて窓になっていて、教室は扇形。東棟の中央にはらせん階段があり、西棟の3階はドーム形屋根の体育館だ。東棟周辺には、縄文時代の絵鞆貝塚もある。
かつてはマンモス小学校として知られたが、市の人口はピーク時の約半分に減り、3年前に閉校した。室蘭の盛衰の象徴でもある建物はいま、存廃の岐路にある。
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東棟には市教育委員会の教育研究所が置かれ、不登校の児童生徒の適応指導教室として使われている。だが西棟は耐震強度が足りないとして、市が「解体を含めて検討中」だ。今秋にも方針を決める予定だが、「2棟存続なら数億円かかる」という。
市民団体「旧絵鞆小活用プロジェクト」は昨年末、「観光や地域の拠点として2棟を残そう」と市教委に提案した。東棟をカフェなどに活用し、その収益で西棟を改修して地域活性化につなげる考えだ。代表の三木真由美さん(43)は、旧産炭地の衰退がよそごとには思えない。製造業が盛んな室蘭だが、石油元売り大手の工場が来春に生産を終え、大手鉄鋼工場も受注減にあえぐ。「珍しい2棟の円形校舎を残して観光振興に取り組まなければ、室蘭も旧産炭地と同じ道を歩みかねない」と訴える。
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だが、市民への浸透はこれからだ。地元の祝津町会長の大友勇さん(79)は、東棟だけ残して縄文文化のミニ博物館として教育に役立ててほしいと思っている。「2棟も残せば将来の市民に維持管理の負担をかける。禍根を残さない現実的な結論を早く出してほしい」と話す。
一方、公共施設のあり方を検討する市の部会で委員を務める真境名(まじきな)達哉・室蘭工大准教授(建築計画学)は別の考えだ。「いい活用案があれば5年だけでもやってみればいい。市民の活力を試すチャンスになるはずだ」
(三上修)